再び自転車を陽気に漕ぎだした我々。
しかし私は、前日同様この時も知る由もなかった。
この後、予想外の痛い思いをすることになるとは………。
これの続きの話です。
ますやパン、ボヌールマスヤで美味しいパンを買う
自転車を修理したところから、10分ほど走ったあたりでしょうか。
友人Jがかわいい緑色の店の前で自転車を停めました。
目的のパン屋さん、「ますやパン ボヌールマスヤ」に到着です。
ますやパンは1950年に創業した歴史あるパン屋さんで、十勝産の食材を使うことにこだわっています。
調べてみると、東京にも2店舗出店していました。
公式HPはこちら→ますやパンHP
店内は広く、多くの種類のパンで賑わっていました。
観光客っぽい人はいませんでした。
みんな地元の人っぽい感じです。
地域に根差したパン屋さんのようですね。
友人Jおすすめのちぎりパン、私の大好きな塩パン、あとなんだったけな、合計3つくらい買いました。
朝食を食べたばかりだったので、分けて食べることにします。
お会計時に希望すると、店内設置の珈琲サーバー用の紙コップがもらえます。
友人Jはコップを受け取り、2人分の珈琲を入れました。
イートインスペースのトースターで購入したパンを焼き、いい頃かげんで回収。
何度も来ていると言うだけあって動作に迷いがありません。
コロナの関係でイートインスペースにも制限があるようです。
「晴れてるから近くの公園で食べよう。」
友人Jはそう言って店を出ます。
私もそれに続きました。
友人Jのおすすめスポット「西町公園」
近くってけっこう遠いやんけ!
自転車を漕ぎながら私は心中焦っていました。
珈琲を入れたコップは蓋をしてあるといっても、その蓋の中央にはストローを刺すための穴が開いています。
斜めに傾ければそこから珈琲がこぼれました。
右手の親指と人差し指で珈琲カップを掴み、残り3本の指で自転車のハンドルを握って自転車を漕ぎます。
友人Jは難なくそれをやってのけ、危なげなく運転しています。
しかし、正直私は危ない。
あ、あ、あ~…。
と珈琲がこぼれ、あの「白くてふわふわでけっこうかわいい手袋」が再び汚れてしまったところで目的地に到着しました。
時間にすれば自転車に乗っていたのは5分ほどですが、緊張感が半端なかったです。
着いたのは、自然豊かな「西町公園」でした。
入り口からは自転車を押して進みます。
園内は人の気配がなく静かです。
昨日の雪が所々に残っていて、少し寂し気な印象を覚えます。
すこぶる寒く手の中で見る見るうちに珈琲が冷めてゆきました。
100メートルほど歩いたところで、友人Jが足を止めます。
ここで食べよう、と指し示したベンチがこちらです。
いや、びしょびしょやん。
仕様がないので3人掛けベンチの人と人との間の「仕切り」に座って食べました。
お尻がちょっと痛かったです。
そして案の定珈琲は冷え切っていました。
しかし、トースターで温めてきたパンはまだ温かく、大変美味しかったです。
特にちぎりパンはふわふわでほんのり甘くてまた食べたいと思いました。
冷めた珈琲を飲み切って、次の目的地を定めます。
私の希望もあり、六花亭のお店へ向かうことにしました。
そこでおやつを食べてのんびりする計画です。
再び自転車にまたがり出発。
公園をぐるりと周って大通りに抜けます。
これまで同様友人Jが道を案内してくれます。
先を走る彼女を追って私も自転車を走らせました。
いや、ちょっとちょっとちょっと待って。
「やばいやもしれん。」
と、思った時にはタイヤが滑る感触がして、私の体は大きく傾いていました。
問答無用で横転。
肩をしたたかに小道の縁に打ちました。
それなりに痛い。
驚いた友人Jが自転車を降りてこちらに戻ってきました。
そうだった。
私、あんまり自転車乗るの上手じゃなかった…。
だから自転車が登場したときに嫌な予感がうっすらしてたんだった…。
怪我はしてないので良いんですが、いよいよ手袋が無残な姿に。
昨日買ったとは思えない汚れようです。
ご丁寧に転倒シーンを再現してくれるJ。
笑ってんじゃないわよ。
ここからは大人しく押して歩きます。
「六花亭ガーデン」でおやつ
六花亭は昔から母が好きでした。
そのため、我が家には時々六花亭のお菓子が現れて、みんなできちんと紅茶を入れて楽しんだりしていました。
六花亭は大きな丸い缶入りのお菓子の詰め合わせを販売していて、その空き缶は今でも実家のお菓子缶として活躍しています。
特に好きなのはマルセイバターサンド。
私が小学生の時の図工の時間、空き箱をリメイクして宝箱を作る授業があったんですが、その際に持って行ったのもマルセイバターサンドの箱でした。
あのスライドして開く空き箱です。思い出深い。
以前、友人Jと北海道旅行に来た時も、富良野の「カンパーナ六花亭」を訪れました。
母同様、私も六花亭が大好きです。
また、六花亭が好きなのは北海道の人も同じのようです。
道行くおばさまの手には、あの白地にかわいいお花が描かれた風呂敷包みが握られています。
1人ではなく、同じ包みを街中で2回も見かけました。
また、泊まった宿「モクモク十勝」の朝食の写真の中にも六花亭のティーポットとお皿が写っていたことにお気づきでしょうか。
私が六花亭の食器であることに気付くと、宿のオーナーは「ポイントで貰ったんだ。」と教えてくれました。
私は「六花亭=高級なおやつ」と認識していたのですが、北海道の人たちにとっては「身近なおやつ屋さん」という位置づけのようです。
西町公園からの道中、リサイクルショップに立ち寄ったり、急にお香が欲しいと言い出した友人Jに付き合って仏壇屋さんに寄ったりしながら、「六花亭ガーデン」の店舗に到着しました。
店内はやはり観光客らしき人は少なく、近所のおばさま達で賑わっていました。
ますやパン同様、地域の人に愛されているのが感じられます。
清潔感のある白い喫茶室で珈琲とケーキを注文しました。
お味は文句なしに美味しかったです。
友人Jの最近のお悩みを聞いたり私のお悩みを相談したりしているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
予定外の目的地「占い」に赴く
時刻は午後3時。
六花亭でのんべんだらりと「世の中上手いこといかないわね」といった話を一通り真剣にして、我々はお店を出ました。
次なる目的地は、私の予定に1ミリもなかった占いでした。
友人Jが、「近くによく当たる占い師がいる」との噂を聞いたので行ってみたいと話したためです。
日が落ち始め寒さが深まりつつある中、再び自転車を走らせます。
我ながら思いますがお互いタフです。
疲れないのか。
しばらく走ったところで目的地に到着しました。
占い師がいるという建物は、古びた1戸建ての建物でした。
大きさはコンビニエンスストアくらいで、お店の名前が看板に書かれています。
しかし、そこには「占い」の文字すらありません。
何を売っているお店なのかも検討がつきませんでした。
私たちが自転車を店先に停めるのとほぼ同時に、1台の軽自動車が店前の駐車場に入っていきました。
中からは若い女性が2人降りて来て、店の中へ入っていきます。
「こりゃ大丈夫かよ。」と思いながらも、私たちも店に入りました。
扉を開けてみると、店舗らしい商品の陳列棚もなく、店奥にいざなう矢印の表示があるのみです。
恐る恐る進むと左手側にある部屋から人の声がします。
そちらを覗くと、中は居住スペースのようでした。
座卓に座った占い師の方と目が合います。
その人の前には、先ほど見た女性たちが座っていました。
「そちらに座って待っていてください。」
そう言われて、指さされた隣の待合室のソファに友人Jと腰掛けました。
仕切りの向こうから占い師と相談者である2人の声が漏れ聞こえてきます。
照明は薄暗く、窓はありません。
待合室の中には観音様の像や奇妙な形の置物、お面がたくさん飾られています。
机の上には1円玉や古銭がたくさん入った箱、巻のとんだ漫画本などが雑多に置かれていました。
怖さはそこまでない。
居心地は良いとは言えない。
こういった雰囲気が占い屋さんらしいとも言える気がします。
20分ほど待った後、前の女性が料金を支払い部屋を出ていきました。
私たちの番が来たようです。
私は占いが好きです。
しかし、信じているかと言われるとそうでもありません。
朝のニュースの星座占いを見て、一瞬だけ一喜一憂する程度です。
良いことを言われると嬉しくなりますが、逆だと意図的に忘れてなかったことにしてしまいます。
恐らく自分のことを他人に判断されるのが好きではないのだと思います。
例え、占い師がすでに決まりきった未来を垣間見て私に告げるのだとしても、私はそれを素直に聞き入れるような心の持ち主ではないのでした。
すぐに「それはどうしてですか」「そんなのなんで分かるんですか」と、納得のいく答えを求めてしまう。
占いとはそういったものでありません。
それは理解しているつもりです。
ただその一方では、「他人から自分がどう思われているのか」という事には大いに興味を持っています。
また、理屈ではない「運」や「偶然」から導き出される運勢にも関心があります。
そして何より「なぜだか分からないけど、答えをくれる占い」は私にとって、身近な「怖いもの見たさ」の欲求を満たすものなのでした。
だから、私は占いが好きなのでしょう。
結論から言うと、今回の占いは楽しかったです。
自分では思いもよらない答えを聞くと、頭の中に風が吹くような新鮮な気付きを感じます。
また、初対面の人に自分の悩みや内面の話を打ち明けるという特殊な環境は、他では味わえない不思議な体験だと思います。
しかし、私はその楽しさを思う存分味わった後、やはり思うのです。
人生の悩みや心配事は私のことをよく知っている人に相談したいと。
今回、私はその偏屈な性格ゆえ、あまり占いに向いているとは言えないことが分かりました。
結局のところ、私は信頼している相手の言葉以外聞く耳など持っていないのです。
だから、「こうした方がよろしい」という明確な答えを聞くと、あえて反発したい気持ちがむくむくと膨らんできてしまう。
これでは真剣に占ってくれている相手にも失礼な話なのでした。
友人Jに至っては納得のいく答えを貰えず、少し落ち込んでいるようにも見えました。
しかし、友達として言わせてもらうと、占い師の方の言った通りに行動を始めたらそれこそ少し心配になります。
疑問や不満を持ってむしろ良いのでは、と思います。
自分の人生なのだから思う通りにすれば良いのだ。
例え派手に転んだとしても。
夕飯の買い出し。インデアンカレーを購入
お店を出るとすっかり日は暮れていました。
本日は友人Jの家に泊まらせてもらう予定です。
自転車を漕ぎ漕ぎ向かいます。
そして、道中再び
「やばいやもしれん」
と思った瞬間、横転していました。
もうやだ~。
今度は脛のあたりを強かに打ちました。
ほんとに痛い。
しばらく痛くて少し不機嫌になりました。
なんなん?なんで今日こんなに転ばないといけないの?
しかしまあ、自転車を漕いでスーパーに着くころには機嫌も治っているのでした。
スーパーで夕飯の買い出しをしました。
お酒の缶をいくつかと、ジンギスカンのお肉。
お酒は私が好きな檸檬堂のサワーです。
荷物を荷台に括り付け、今度はカレー屋さんを目指して出発。
友人Jが「これを食べないと十勝に来たとは語れぬ」と力説する「インデアンカレー」。
「インディアン」ではなく「インデアン」カレー。
私は電話で話を聞いて以来、ぜひ食べたいと思っていました。
ルーのテイクアウトも承ってくれるようでございます。
友人Jは「インデアンルー」と「野菜ルー」の2種類のルーを購入しました。
テイクアウト用の容器に入ったルーを持って、さらに自転車を漕ぎ漕ぎ。
いよいよJ宅に到着です。
友人J宅に到着
さて、J宅に到着です。
お風呂に入ったり、夕飯の準備をしたりして一息付きました。
ほぼ初対面の彼氏さんと上手く話せるか不安でしたが、その心配は不要でございました。
優しくお話してくださる方で、人見知りぎみな私も安心して話すことができました。ありがとうございました。
夕飯に先ほど買ったインデアンカレーとジンギスカンを出してもらいました。
何から何まで準備してもらってしまって、恐縮でございます。
ジンギスカンやお野菜、チーズなどをホットプレートで焼きます。
大変おいしゅうございました。
そして、楽しみにしていたカレーがとっても美味しかったです!
2種類のルーはどちらも甘めで食べやすく、こってりコクがありました。
特に野菜ルーはたくさん野菜が溶けていて甘みがよりまろやかです。
いくらでも食べられそうなお味。
今も食べたいくらい。
友人Jの「インデアンを食べねば十勝を語れぬ」の言葉にも納得でした。
食後に私が買ってきた箱根土産、菜の花の「焼きモンブラン」を食べました。
美味しいと言ってくれて嬉しかったです。
長い2日目の終わり
彼氏さんとも一緒にお喋りをして、気付けば深夜近くになっていました。
明日、私は友人Jがいる十勝帯広を離れ、1人で小樽まで移動する予定です。
朝早くに出発します。
友人Jが布団を敷いてくれました。
布団の中には湯たんぽまで用意してくれています。
ありがたやありがたや。
長い2日目の終わりです。
布団に入ると相変わらず、秒で睡魔がやってきます。
今日も私は安らかに眠りにつきました。
友人J、2日にわたるガイド、本当にありがとう。
とても楽しく思い出深い十勝帯広観光でした。
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