機敏な父

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雑記帳
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私はバスで通勤している。
今日は諸事情がありいつもより一本早いバスに乗った。

父も通勤のためにいつもその時間のバスに乗っている。

父について

父は今年定年を迎え長年勤めた会社を退職した。
その後は家の近くの新たな職場で週に数日勤めている。
世間的に特別変わったところはないが、私にとって大変偉大な優しい父親である。
(そりゃ、一緒に住んでいると多少の不満もありますが…)

そんな偉大な父とはいえど人並に年は重ねる。

最近は以前よりも背中が曲がったような気がして、私をはじめ、姉と弟も結構心配してたりするのである。
だから健康には気をつけて欲しいと苦言を呈したりもするけれど、これが全く響いていない。
その態度に最近は少しイライラしてしまったりする。

知られざる一面

同じバスに乗っていても私はシャイなので父と会話をしたりしない。
私はバスの真ん中あたり、父はバスの前の方でそれぞれ他人みたいな顔をして立っていた。
夏休みが終わったので車内は学生さんでいっぱいだった。

私たちは同じバス停で下車し、それぞれ異なる路線のバスに乗り換える。
下車したバス停から乗り換えるバス停までは大きな道路2つを渡り、さらに50メートル位だろうか。結構距離があるのである。
私は比較的時間に余裕があったので、のんびり歩いて乗り換え場所へ向かうつもりであった。

視界の先には道路を渡るための横断歩道が見える。

その信号が青になった途端、最速でスタートダッシュを決めた人がいた。

父である。

速い。

速かった。

瞬く間に道路2つを横切って、私の視界から姿を消した。
他にも乗り換え時間に間に合うように走っている人は結構いた。
しかし、父が一番速かった。ぶっちぎりである。

あの、最近年をとって背中が曲がってしまって私たちが健康を心配してしまう父が!

私はそれにびっくりした。
多分私負けるわあの速さ。あんなに速く走れないよ私。

……別に、今回の話は、それだけの話なんだ。
でも、私はその事実が大変嬉しかったのである。

(とはいえ転ぶと危ないから気をつけて欲しい)

帰宅後、先に帰りいつものようにギターを弾いている父に「足が速くてびっくりした」と伝えた。
父は別に大したことでもないと言うように笑っていた。

ちなみに、乗り換えのバスには間に合わなかったらしい。

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