鈴廣かまぼこの里を出て、バス通りをひたすら歩きます。
太陽はすっかり高く上りました。
つまり、お腹が空きました。
箱根湯本に着いたら何を食べましょうか。
今日はスイーツではなくがっつり何か食べたい気分です。
やがて見知った箱根の観光地の案内標識が見えてきました。
いつも思うのですが、箱根のキャッチフレーズ「なんかいいよね、箱根って」ってもう少しどうにかならないのでしょうか。
だからと言って私に名案があるわけではないのですが…。
誰かなんとかして。
箱根湯本駅が見えてきた
あの曲線が絵になる建物は箱根湯本駅です。
これにて小田原から箱根湯本間踏破。
さて、今の私の優先事項は何よりご飯です。
箱根湯本駅は美味しいものがたくさんあります。
湯葉丼、干物の定食、ローストビーフ、おしゃれなホットサンド。何を食べようか考えながら駅前の大通りを歩いていきます。
しかし、結局すぐには決められず、気がついたら駅前のお店の端まで来てしまいました。
そこで道路の向かいに風情ある建物が建っていることに気がつきます。
どうやら喫茶店のようでした。
外観に引かれて今日の昼食はここに決めました。
画廊喫茶ユトリロ
お昼時を過ぎたとはいえ、店内は賑わっていました。
ほとんどの座席が満席です。
外から見ると小さく見えますが、実際は縦に奥行きのある建物のようです。
長方形の２つの建物を細い廊下で繋いだような構造をしていると思われます。
楽しそうな話声が奥から聞こえるあたり、見えないスペースもお客さんでいっぱいのようです。
私は入り口から近いソファの席に落ち着きました。
ソファの背もたれには花模様の刺繍がしてあり、座ると深く沈み込みます。
ネットでこちらのお店を検索してみると、「画廊喫茶」と称されています。
なるほど、確かに壁にはいくつもの絵が飾ってあり、その他にも彫刻品や美術品が並んでいます。
しかし、美術館のように人と隔離されて展示してあるわけではありません。
座席のすぐ真後ろの手が触れてしまいそうな距離に置いてあります。
一見、奇抜な置物もカフェの空気に溶け込んでいるように思われました。
細い線と絵の具でかかれた外国の町の絵、リアルな少女の人形、耳の長い動物や双頭のを持つ二足歩行の犬の彫刻、男の胸像。
そういった置物たちが店内の壁際を占領しています。
入口近くには、伸びすぎた観葉植物が枝葉を広げています。
店内にはもう１本観葉植物があって、やはりそれも天井近くまで枝を伸ばしているのでした。
天井では速度が異なる２つのファンが回っています。
オーダーをとって料理を運んでくれる店員さんは1人だけですが、見ていて気持ちがよくなるほどにテキパキと働いていらっしゃいました。
カレーと珈琲
オススメはカレーライスと水出し珈琲のようでした。
せっかくなのでその2つを注文します。
改めて店内を眺めてみると、多くのお客さんがカレーと珈琲を楽しんでいました。
ユトリロでは、こだわりの豆を自家焙煎でしてるそうです。
カウンターには瓶に入った珈琲豆が並んでいます。
珈琲を入れる水にもこだわりがあり、箱根の天然湧水を使用しています。
店内にはドビュッシーの月の光が流れていました。
特にクラシックに詳しいわけではありませんが、この曲は知っています。
静かで優雅な曲です。
お店の名前は、画家の「モーリス・ユトリロ」から命名されているそうです。
彼は近代のフランス人画家で、活動拠点は主にパリでした。
パリの街の風景や日常の様子などの絵を残しています。特に彼がアルコール依存症に苦しんだ「白の時代」と呼ばれる時期に書いた作品は高く評価されました。
画廊喫茶ユトリロでは実際にユトリロが描いた絵を見ることができました。
かつて画家ユトリロは友人セザール・ゲイが経営する飲食店の奥の部屋で創作を行っていました。書き上げた絵は、セザールの持つカフェの壁に掛けられ、それをきっかけに一躍有名になったそうです。
座り心地の良いソファでユトリロの生涯についての記事を読んでいると、まるで自分がパリのそのカフェにいるような気分になってきます。
カフェの壁に掛けられたユトリロの絵、洋風な調度品や一風変わった置物たち、細い廊下の奥の部屋。画廊喫茶ユトリロの構造は画家ユトリロの生活の場に似通っているのかもしれません。
奥の部屋でキャンバスに向かう男の姿を想像していた時、カレーライスが運ばれてきました。
辛みは少ないですが、確かにスパイスの存在を感じるカレーです。
後引くおいしさ。
少し遅れて珈琲がやってきます。
カレーに合わせて冷たいものを注文したのでした。
一口飲むだけで丁寧に入れられたことが分かるような珈琲です。
さらりとしていて酸味は少なく、苦いけど甘いような柔らかい味がします。グラスを持ち上げる度に氷が硬質な音をたてて揺れています。
今までで飲んだ中で1番美味しい珈琲でした。
帰路につく
カレーライスと珈琲を堪能して少しお腹を休めた頃に、柱時計が錆びた金属音を3回鳴らしました。
席を立ってお会計を済ませます。
箱根湯本で存分に遊んだ後は、画廊喫茶ユトリロで丁寧で美味しい料理を食べて一休みするのはいかがでしょうか。
きっと他の人にもお勧めしたくなる素敵な時間を過ごせると思います。
それでは今日はこの辺りで失礼します。
皆様も良き箱根ライフをお過ごしください。
2021年1月 再来訪
久しぶりに箱根湯本で珈琲が飲みたくなったので、画廊喫茶ユトリロへ立ち寄りました。
アップルパイと冷たい珈琲。
相変わらずおいしゅうございました。
最近はコロナウイルスの関係で湯本駅前も静かです。
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