【箱根湯本】日帰り温泉!時代を飛び越す かっぱ天国

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箱根周遊
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湯本の異世界、日帰り温泉かっぱ天国へ

重いおなかを抱えて、デリ&カフェみつきを後にします。

これはちょっともう食べられない。
しかし、せっかく湯本に来たんだからもっと色々食べたい。ならどうしようか。
おなかを休めなければなりません。

近くにちょっとしたハイキングコースとか神社とかがあれば行ってみようと思います。

マップを出そうと鞄に手を伸ばしたその時でした。ちらと鮮やかな色の看板が視界に入ります。

かっぱ天国って何よ。

看板に近寄ってみるとどうやら温泉のようです。

興味をそそられた私はお湯に浸かって一休みすることに決めました。
ひとりだと衝動で動けるのが楽しいですね。

しかし不思議なことに、同じ施設のはずなのに矢印が2つ。

男道と女道。

とりあえず私は女なので左に進みます。すると2番目の看板が。

野天風呂ってどんな?露天と違うのかしら?

頭に?を浮かべつつも看板に従って進みます。

足湯が突如ありましてん

足湯がありました。

しかし、店員さんは誰もいません。
よく見ると足湯の屋根の下に料金箱の文字が見えます。
金額は200円でした。なんだか野菜の直売所みたいです。

しかし私の目的は野天風呂なのです。

矢印に従い先に進みましょう。

足湯の脇から階段を上がり、廊下のような道を通ります。

左手側には湯本駅が見下ろせます。結構高いところまで上がってきました。

道の脇には点々と丸いピンク色の提灯が点ってます。

入口に到着したようです。

この時点でどうにも心細く、帰ろうかどうしようか迷いました。

ひとりだと感覚を共有できる人がいないことが難点です。

かっぱ天国の野天風呂

結局好奇心に勝てず、恐る恐る扉を開けて、中を覗き込みます。

木でできた高い番台があり、そこにはおばさまがひとり座っているのでした。

中は少し薄暗く、一昔前の銭湯にでもタイムスリップしたかのようです。

建物の入り口にしては物が多く、それら全てが長く時間を経た物特有のフィルターをかけたような色のあせ方をしています。

左手側にはどこへ続いているのか分からない扉があり、その向こうから数人の男性が話す声が聞こえていました。

何を話しているのかまでは聞き取れません。
姿が見えず、遠くから聞こえる話し声とはこうも胸騒ぎを覚えるものなのでしょうか。
ここに至るまで人の気配がなかっただけに、奇妙な夢に呑まれたような心地です。

「こんにちは」

と、声をかけました。

すると意外にも朗らかな声でおばさまは答えてくれます。

「こんにちは。入浴ですか」

おばさまには少しも奇妙なところがありませんでした。

その様子を見て安心しました。

良かった、河童御用達の湯屋というわけではないようです。

おばさまは親切にタオルを持っているかどうかを聞いてくれ、靴箱の使い方などを案内してくれました。

靴を下駄箱にしまい、建物の奥に向かって再び階段を上ります。階段を上ると長い廊下に出ました。

この辺りで再び人の気配が消えて、木がざわざわと鳴る音しか聞こえなくなります。

なんとなく不安を覚えて後ろを振り返りますが、特に異常があるわけでもありません。
廊下を窓から差し込む光がぼんやりと照らしています。

どうも「迷い混んでしまった」感が拭いきれないことに不安を覚えるのです。

しかし、途中で立ち寄ったトイレはウォシュレット付きで大変きれいなのでした。
その綺麗さが逆に異質な空間として浮いて見えます。

普遍的な空間の中の異空間の中の普遍的空間。便座に座りながら少々脳みそが混乱しました。

ここでかっぱ天国の基本情報を紹介しときます。

かっぱ天国の営業時間、料金、駐車場など

かっぱ天国基本情報2020年10月現在
営業時間10:00~22:00
利用料金入浴)大人/800円 こども/400円
足湯)大人/200円 こども/100円
定休日なし
駐車場あり
最寄り駅箱根湯本

公式HP かっぱ天国HP

のれん

廊下の突き当たりに女湯ののれんが掛かっています。

その右側に男湯の入口があるようでした。

この記事を書いていて気づいたのですが、ここに男湯があるというのはどういうことでしょうか。てっきり1番始めの看板にあった「男道」を進むと別の入口があって男湯に続いているのかと思っていましたが違ったようです。

では男道の先には一体何があるのでしょうか。

それはさておき、のれんをくぐるとまた階段がありました。
疲れるほどの距離ではありませんが、番台から離れれば離れるほど深みに潜っていくような心細さを覚えます。
そして右側は外でした。大変ワイルドな作りの建物のようです。

やがて脱衣所に到着しました。

脱衣所

ここに来て浴室から女性の話し声が聞こえてくるのに気付きます。

入口で聞いた男性の声とは異なり今度は内容が聞き取れるだけに、人との出会いを素直に嬉しく思います。

脱衣所の中には誰もいませんでした。
床は木のすのこが敷いてあり、錆びた100円コインロッカーが置いてあります。

洗面台や鏡、ドライヤーも用意されていました。どれも古くはありますが不自由はしません。

ロッカーに荷物を入れている間も浴室からの話し声は続いています。
どうやら箱根観光にきた2人連れのようです。
1人がもう1人を「お母さん」と呼んでいるため親子であると推測されます。

ロッカーに100円を入れて鍵を抜きました。

ここでもまた、ありえない考えが頭をよぎります。

(浴室の中の親子が妖怪だったらどうしよう…)

そもそも「かっぱ天国」という名前に影響され過ぎているのです。
これがもし「極楽湯」とか「なかよし温泉郷」とかありふれた名前だったらこんな想像は抱かないのです。

ましてや駅前徒歩5分の抜群のアクセスにも関わらず、この情緒溢れる佇まい。

いつの間にか私は入っては行けない世界に入り込んでしまったのではないか、という考えが頭の片隅から消えてくれません。

なにゆえ「かっぱ天国」なのか。

名前だけ聞くと、人間不可妖怪専用お風呂かと心配してしまうではありませんか。

とりあえず素っ裸で考え込んでいても仕方がありません。

入浴しているのが妖怪だろうが人間だろうがここまで来てのこのこ引き返すことは私の心情に反します。

いざ突撃。

浴室も趣深かった。

扉を開けると湯船の中に二人の人が浸かっておりました。

大丈夫です。なんの変哲もない人間のようです。

野天風呂とは良く言ったもので、まさにそこは山に面して作られた外のお風呂でした。

お風呂の湯舟は丸い石造りのものが1つあり、10人入ってものんびりくつろげそうな広さです。

お風呂の上の屋根はむき出しの丸太で支えられており、屋根はトタンでできています。
強い風でも吹けば容易に飛ばされてしまいそうな屋根ですが、今まで残っているということは見かけほど脆くはないのでしょう。
トタンは何枚も重ね合わせてあり、そのいくつかには透明な板が使われています。
落ちた葉っぱが上に積もっている様子が見てとれます。

洗い場は3つ。
ボディーソープ等石鹸も備え付けてありました。
シャワーもきちんと付いています。

壁のほとんどは城壁のように石を積み上げられてできており、洗い場近くの壁は色の濃い木でできていました。

それぞれ一様に長い時間そこにあった風合いです。

私はかつて読んだ小説の一部を思い出していました。

それは江戸時代、大きなお店の若旦那が江戸からはるばる箱根まで湯治にいく話です。
彼が入った湯治場も、もしかしたらこんな感じだったのかしらんと思いをはせるのでした。

端的に言いましょう。

私この場所とっても好き。

壁と屋根の間は大きく空いていて山の緑が見えています。

この日はいささか曇っていましたからそこから冷たい風が吹き込んでくるのでした。

私は洗い場のシャワーで体を流してからお湯に浸かりました。

お風呂は浅めで座ってみると胸の上辺りまで浸かれます。
そのため上体を少し倒して肩までのんびり浸かるのでした。

先ほどまでの懸念はどこへやら、温泉につかってしまえば頭の中は「いい湯だな~」ということしか考えられなくなってしまいます。

脱衣所の扉を背にしてお湯に浸かると目の前には2メートル程の岩壁がそそりたっています。

親子が話している内容になんとなく耳を傾けていると、どうやら先ほどまでその岩壁の上から熱いお湯が流れ落ちてきていたらしいのです。

時間で決まっているのか、お湯の温度が関係しているのかは分かりませんが、私はお湯が出てくるまで待ってやろうと決めました。

それと、浴室に入った瞬間から気になっていたのですが、その岩壁の下の方、ちょうど私の目線とかち合うあたりになんとも化け物じみた女性の置物が置かれているのでした。

その置物の女性は我々と同じく裸で岩の上に座っています。
大きさは確か30センチほど。
目も口もつり上がっており顔は妖怪じみています。
笑っているようにも怒っているようにも見えました。

頭にお皿はなかったので一応人間モチーフなのかもしれません。

特に見る場所もないのでまじまじとその置物と視線をあわてせていたところ、15分ほどたった頃でしょうか。

なんの前触れもなく岩の上から熱いお湯が勢い良く流れ出しました。

それまで長湯に適したぬるめのお湯だったのが、みるみるうちに温度が上がり、浴室全体がもうもうと湯気に包まれてゆきます。視界が煙り、置物の姿がゆらりとぼやけて見えなくなりました。

どれほど熱いのか手を伸ばしたところ、後ろから声をかけられました。

「熱いですか」

親子の娘さんの方が私に尋ねたのでした。

娘さんと言っても私より一回り年上のように見えました。
ちょうどその親子は私の母と、祖母くらいの年齢に見えます。

「結構熱いですね」

流れ落ちるお湯に触れながら私は答えました。

「観光ですか」

「はい。最近このあたりに越してきたものですから」

「そうでしたか。私たちはお墓参りにの帰りなんです。つい最近まで箱根で働いてたんですよ」

全く一瞬でも妖怪ではないかと疑った自分が馬鹿馬鹿しくなるほど、娘さんは元気でよく笑う方でした。

生活圏が被っていたことで話が盛り上がり、私も箱根のどこの温泉に行きたいだの、美味しかったお店についてだの、あれこれと話をしました。

気付けば随分と長くお湯に浸かっていたように思います。

岩壁から流れ落ちるお湯はいつの間にか止まっていて、しばらくするとまた流れ出しました。

それが再び止まる頃、私は湯船から立ち上がりました。

箱根登山鉄道が走るゴトゴトという音がします。

私は長く風呂に浸かっているのが好きですが、親子も揃って長風呂好きのようでした。

私が先に上がる旨を伝えると笑顔で送り出されました。
二人はもうしばらく浸かってから帰るそうで、また初めのように朗らかに雑談を始めるのでした。

風呂上がり

脱衣所のロッカーに鍵を差し込んで、捻ると鍵があきました。

しかし、100円が戻ってくる気配はありません。あれ~?

よく見るとロッカーには爪で引っ掻いて書いたかのような

「non return」

の文字が。

何人もの観光客がこのロッカーに100円を奪われている模様。
奥の比較的新しめのロッカーの方は戻ってくるやもしれません。

体を拭いて服をきて、ふと壁の時計に目をやると、私が入ってからちょうど1時間が経過しているようでした。

思っていた以上に長居をしてしまいました。
来た道を辿って番台まで戻ります。

廊下の途中にお酒の自動販売機がありました。

豆知識なんですが、このお酒の自販機はすでに製造中止されているためレアなんですよ。
壊れてしまったら最後、撤去されてしまうそうです。

番台まで戻ると、来たときと変わらずおばさまが迎えてくれます。

料金は800円でした。
ロッカーに取られた100円を差し引いても、源泉かけながしの温泉でこのお値段は大変お安い。
ありがたいです。

帰りがけに、ここは何年前からあるのか尋ねたところ、

「もう何年も前からあるわよ」

と、おうむ返し的に濁されました。
いったいどれほど前からあるんだ…。

そして、

「古いけど、今日はお客さん誰もいなくてゆっくりできたでしょ」

この言葉に私は凍りつくことになります。

一瞬停止した脳みそでは、下手な愛想笑いを浮かべて

「あ、はい~」

としか返すことができませんでした。

深く考えるのはよしましょう。
誰にでも勘違いはあるものです。

入ったときに聞こえていた男性の話し声はもう聞こえませんでした。
浴場につながる階段から誰かが降りてくる気配もなく、建物の中には私とおばさまの2人だけしかいないような錯覚を覚えます。

そう、錯覚に違いありません。

まとめ

さて、湯本駅前かっぱ天国、私的にはまた行きたいスポットにランクインです。

男道の先、番台隣の話し声がした部屋、ほぼ山の中な野天風呂、そして計り知れないかっぱ天国のその歴史。

全てが物語が始まる舞台のようでドキドキします。

新しく美しいものは数あれど、真に訪れるべきは長い時間そこに有り続けたものだと私は思います。

いったいどんな人や妖怪があのお湯に浸かったのか、想像するだけで時間が過ぎていきます。

湯本にきたならぜひ訪れていただきたい、そんなかっぱ天国なのでした!!

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