霧煙る寒い日、私は芦之湯のバス停でバスを降りた。
霧が音を吸うせいか、辺りはしんと静まり返っている。
目の前にぼんやりとドールハウス美術館の建物が見える。
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箱根ドールハウス美術館の営業時間、休館日、入場料、割引など
ドールハウス美術館 基本情報 | 2020年11月現在 |
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営業時間 | 4月〜10月/10:00〜17:30 (最終入館17:00) 11月〜3月/10:00~17:00 (最終入館16:30) |
営業日 | 月・金・土日祝日 (火・水は事前予約制) |
休館日 | 12月31日~1月3日 |
入場料 | 大人/1200円 学生/1000円 小学生/700円 |
最寄りバス停 | 芦之湯 |
写真撮影 | 可 |
公式HP | 箱根ドールハウス美術館 |
割引情報
ネットで検索すると購入時の画面提示で割引されるクーポンが出てきます。
箱根ドールハウス美術館に入館する
箱根ドールハウス美術館は2017年4月にオープンした比較的新しい施設だ。
もとは、「芦之湯フラワーセンター」という四季折々の花々が楽しめる植物園だった。
現在でも建物には植物園の特徴が色濃く残っている。
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建物は丸い空間を3つ、三角形に並べ、それそれを細い通路で結んだ形をしている。
上の写真は入り口を入ってすぐの場所だ。
チケット売り場、ミュージアムショップ、カフェがある。
晴れた日には天井から太陽光が差し込んで、明るい雰囲気なのだろう。
残りの2つの空間の内、1つは展示室として利用されているがもう1つは現在使われていないようだった。
チケットを購入し展示室に入る。
サイズは12分の1。精巧で緻密なドールハウスの世界
ドールハウスは時代が古いものから順に展示されている。
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部屋をのぞき込むと、棚に並んだ本や調度品から住んでいる人の暮らしぶりまで想像できるほどに作りこまれている。
ドールハウスは基本的に、家や家具などを12分の1のサイズに縮小して作ったものを指す。
そのため、歴史ある古いドールハウスは私たちが思っているよりも大きい。
起源は16世紀ごろのヨーロッパで、主に貴族たちが所有していた。
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ドールハウスは豪華な建物がモデルになっているものが多いが、そればかりではなかった。
使用人の部屋や、原住民族の生活の様子をミニチュア化したものも展示されている。
当時の人々にとっては、子どもに与えるおもちゃという側面を持つと同時に「美術品」としての価値も高かったのだと思う。
製作者の思いやこだわりも随所に感じられた。
私は今、細い通路のような展示室を進んでいる。
先に述べた通り、3角形の形の建物の「辺」の部分を歩いているのだった。
展示室の壁は黒く、両側に並べられたドールハウスが明かりに照らされている。
私と同時に展示室に入った2人組の女性は、もう先に行ったようで姿が見えない。
後から入ってきた年配の夫婦が私を追い越してゆく。
周りに人がいなくなったことをこれ幸いと、私は床に片膝をついてまじまじと家の中を観察した。
玄関から入り、1階の室内を眺める。
まさにこれから食事をするのだろうか。ごちそうがテーブルに所狭しと並んでいた。
テーブルの傍らには緑色の服を着た女性の人形が微笑んでいる。
2階の机にも料理が並んでいる。
どんだけ食べるつもりなのだ、この家の住民は。
2つ目の丸い空間。列車が走っている。
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暗い展示室を抜けると、外の景色が見えた。
植物園の名残を強く感じる。
ここに展示されているのは、鉄道のミニチュアだ。
さらに先へ進むと大きく視界が開け、2つ目の丸い空間に出る。
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ベルニナ急行の説明文と、唐突に爆弾のボタンのようなものが置いてあった。
支持の通り「少し強めに長押し」する。
汽車の走る音が流れ出した。
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反対側からも来る。
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中腰になりながら夢中でカメラで追ってしまった。
丸い空間の中には、大きく円形に線路が敷かれていた。
周囲は山岳地帯をイメージして木々が植えられ花が咲いている。
展示の中で、「美術館の中には妖精が住む」という話に触れられていた。
確かに、このどこか浮世離れした美術館には外の「一大観光地箱根」とは一線を引いたような風情が漂っている。
霧の深い芦之湯という地の特性も相まって、物陰に妖精の1人や2人、潜んでいても不思議ではないかもしれないと私は思った。
ちなみに私はドールハウス美術館に足を運ぶのは3回目だ。
そして3回とも霧が深く、遠くを見渡せないような日に訪れた。
天気の良い日に来て、素敵な写真を撮ってからブログにあげようといつも思って今日に至る。
私は列車の模型にピントを合わせ、シャッターを切った。
カメラのファインダーから目を離し、ふと背後を振り返る。
もちろんそこには何もいない。
雑多な雑貨屋に目を凝らす。
建物の2つ目、3つ目の辺を歩く。
(3つ目の「角」にあたる丸い空間は使われていない。)
ここには、より精巧なドールハウスが数多く展示されていた。
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中でも上の写真のドールハウスに魅入ってしまった。
実在した雑貨店のミニチュアだ。
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観察すると、高い位置のものを取るための踏み台がちゃんと用意されていた。
箱や袋には商品名が書き込まれていて、何が入っているのかわかる。
箱1つ、壁のポスター1つ、どれも作った人がいることを考えるとすごい。
作って並べて覆いをかけて、今日の朝納品させたであろう砂糖の大袋をカウンターの中の棚にしまい、計量用の寸動を軽いものから順に並べる。
人形を先に置くのだろうか。それとも、家があってそこに人形が住むのだろうか。
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主役は犬を連れた彼女である。
彼女が見ているのは、ドールハウスの作者である「モッツ」自身が書いた絵だ。
展示室の終わりとVRの世界
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見ごたえのある展示だった。
展示されているドールハウスの数も多いし、それぞれにきちんと説明書きが付いている。
映像での解説もあったのでドールハウスについての知識も深まった。
間違いなくここでしか見られない展示である。
展示室を出ると気になるものを見つけた。
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なんとドールハウスの中に入る体験ができるVR機器があった。
早速装着してみる。
「すご」
思わず声が出るレベルで楽しかった。
先ほど写真であげた「モッツ雑貨店」のVRだった。
まさに人形サイズになって、店内のあの高い棚を私は見上げていた。
正直、画質はそんなに良くない。
細かいところまでは鮮明に見えないが、品物を手にとれるのではないかと思った。
とても臨場感がある。
カフェでグラタンを食べる
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グラタンが食べたくなって立ち寄った。
チケット売り場とカフェは隣り合っていて、どちらも1人の店員さんが担当していた。
館内のスタッフはこの方1人のようだ。
撮った写真をのんびり整理しながらグラタンが来るのを待った。
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ホワイトソースはあちあちでチーズの焦げが香ばしい。
海老が入っていてとても美味しかった。
温野菜はさっぱり酸っぱめのドレッシングがかかっている。
本音を言うと、そんなに期待せずにお食事を待っていた。
なぜなら、箱根はやはり観光地であるし物価も高い。
簡単に冷凍のものを解凍して盛り付け、提供しているところも少なくないと思う。
それに対してドールハウス美術館のグラタンはとても美味しかった。
次来た時には別のメニューも食べたいと思った。
そして食後には甘いものが食べたい。
カメラを買ってから、出費への抵抗が弱くなってしまった。
財布の紐ガバガバである。
ホームメイドアップルパイに惹かれて注文した。
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残念ながらアップルパイは品切れだった。
フォンダンショコラ(ガトーショコラだったかもしれない)かチーズケーキならあるということだったので、チーズケーキを頼んだ。
かつて2回、チーズケーキを前にどんよりと人生の悩みについて考えたのを思い出す。
だめだ。チーズケーキを前にすると悩むスイッチが入りそうになる。
チーズケーキ大好きなのに最悪な習慣がついてしまいそうになっている。
私は早々にチーズケーキを食べた。
やはりチーズケーキは美味しかった。
ドールハウス美術館でファンタジーな世界へ
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「ドールハウス」の意味は本来「小さな家」という意味だそう。
私は「人形の家」という意味かと思っていた。
確かに展示されているドールハウスの主役は人形たちではなく、細かいところまで作りこまれた「家」であると実感した。
顔を近づけて部屋の隅々まで注意深く目を向けると、動物が隠れていたり意外にも雑多に物が積み上げられていたりする。
見れば見るほど様々な発見があって楽しい。
そして、何より見ていると想像力が掻き立てられる。
開きっぱなしの本やこぼれたミルクを舐める猫、かぼちゃを抱えた少年など。
そのドールハウスの中で繰り広げられているストーリーを想像せずにはいられない。
私は展示品を眺めながら、小さい頃にした人形遊びの記憶を思い返していた。
箱根の有名で大きな美術館を見学するのも良いが、ドールハウスを眺めつつ自分自身の想像力を駆使して楽しむのも価値がある体験になると思う。
ぜひ芦之湯で1度バスを降り、多くの人にドールハウス美術館を訪れてみてほしいと思った。
そして、私は「今度こそすっきりと晴れた日に来よう」とまた思うのだった。
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