この投稿は上の続きです。↑
芦之湯到着。きのくにやへ。
バスを降りると、辺りはしんと静まり返っていました。
周囲に人の姿はなく、空気はしっとりと湿っていて霧がかかっています。
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国道1号線を外れ、バス停から歩くこと約3分。
今日のお宿である「きのくにや」が見えてきます。
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歴史ある宿「きのくにや」
オレンジ色の日帰り温泉の幟が目立ちます。
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宿の前の道にある窯のお風呂。
これは硫黄泉の源泉を引いているそうです。
ケロリン置いてあるけど、さすがにここに裸で入る人はいないよな…。
そう思って手を突っ込んでみるとお風呂と言うにはぬるすぎでした。
ちょっと安心。
とりあえず荷物を置いてチェックインを済ませてしまいましょう。
15:20 芦之湯散策へぷらぷら出発
チェックインを済ませ、ちょっと部屋でごろごろしたりしてから芦之湯見学に出発です。
出発時間にしては遅すぎますが。
その時のこと含め、きのくにやでののんびりエピソードは次回の滞在記で書きたいと思います。
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宿を出ると何か趣深いものがいきなりありました。
後で調べてみたところ、右手側の「源泉」の白い看板の奥に硫黄泉の源泉があるそうです。
本当に宿の目の前から沸いてるのでびっくり。
また、写真左手の建物は明治時代に営業していた建物のようです。
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宿から右の道に行くとある建物。
石の像が並んでいてなんだか物々しい雰囲気。
きのくにやの部屋に置いてあった案内図によると、どうやら資料館のようでしたがこの時は開いていなかった様子。
そしてその横に、
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「東光庵熊野権現旧跡」
と年季の入った看板が立っています。
誰も、誰も歩いていない。ほんとに。
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小道の先の階段。
何かある予感。
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東光庵薬師堂と熊野神社
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芦之湯には月夜の晩に狸が円になって踊っていそうな場所が本当に多い。
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階段を上がり、鳥居をくぐって正面に見える建物は「東光庵薬師堂」です。
芦之湯が湯治場として名を挙げたのは江戸時代のことでした。
湯治に来た人々は長期に滞在することが多く、その中には歴史上に名を残している文人も多くいたそうです。
そんな彼らが集っていたのが、この東光庵。
なるほど、集っていたのは狸じゃなかったようです。
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東光庵は熊野神社の境内の中にあります。
神社にお参りはしたのですが、写真を撮らせていただくのを失念しておりました。
神社とか神様がおわす場所って、写真で納めておきたい気持ちと恐れ多い気持ちがせめぎあう感じがします。
広場の周囲にはぐるりと俳句や歌の碑が残されていました。
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東光庵、中の見学ができました。
置いてあったスリッパは砂や埃で汚れることなく、綺麗に拭かれているようでした。
床もざらつく感じはありません。
誰もいない静かな東光庵の中に、人の気配を感じるような不思議な心地がいたしました。
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明治時代に東光庵は一度焼失しました。
その後、再建されたのが今私がいるこの庵です。
しかし、香りや静けさは恐らく当時と変わりないでしょう。
かつて、松尾芭蕉や賀茂真淵が見た景色を共有していると思うと、脈々と人々を集める土地というのは時を経るごとにその重要性を高めるように思います。
そんなことをぼんやり考えていると、突然ガタリと入口の扉が音を立てました。
ついに事件か!?事件だ!事件だ!
思わず身構える私。
ガタガタと開いた扉の外には、青いジャンパーを羽織ったおじさまが立っていました。
おじさんはここを管理している方らしく、大体毎日16時に施錠に来るそうです。
全然事件じゃなかった。
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おじさんはコロナによって観光客が減り、入湯税がかなり減ってしまったことを話してくれました。
それにより東光庵の茅葺き屋根の修繕費も出ず困っているそうです。
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歴史あるものを維持管理するには、やはり相応にお金がかかります。
かつての文人、多くの人々が愛した場所が、この先も私たちを迎えてくれることがどんなに貴重なことであるか感じさせられるのでした。
15:50 六道地蔵へ挨拶
東光庵で会ったおじさんは、ここから徒歩15分ほど離れた「六道地蔵」の管理も行っているそうです。
「あそこのお地蔵さまは立派だからぜひ見に行くと良い」とおすすめされたので、それなら今日のうちに見に行こうと私たちは東光庵を後にします。
国道1号線に出ると、車は意外とたくさん走っていました。
相変わらず歩いている人はいませんが。
ゆるやかな登り坂を登ります。
数分登ったところで、後ろから走ってきた1台の車が道の路肩に停まります。
窓を開けて顔を覗かせたのは先ほどのおじさんです。
私たちはおじさんのご厚意に甘え、六道地蔵まで車で送っていただくことになりました。
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車を歴史館の駐車場に止めて、私たちは車を降りました。
歴史館は精進ヶ池のすぐ隣にある無人の資料館です。
六道地蔵は国道1号線を挟んだ反対側にあります。
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池に沿ってある遊歩道。
おじさんがいなければ気付けない道です。
不謹慎極まりないのだけど、池の雰囲気、霧、静けさ、どれをとっても物騒な気配が拭いきれない。
そして現れる薄暗い石造りの地下道…。
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ホラースポットかい。
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そして六道地蔵さまにご対面。
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暗くてお顔は見えない。
カメラの設定をいじって写すこともできたのですが、なんとなく畏怖の念というか、やはり恐れ多さのようなものを感じてじっくりレンズを向ける気にはなれませんでした。
失礼のないようにしなければ、という意識が自然に沸いてくるようです。
私たちはお賽銭を入れてお参りを済ませました。
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そして門を閉ざすおじさん。
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雨が強くなってきました。
日も落ちて、周囲は薄暗くなってきています。
そろそろお宿に戻りましょう。
東光庵薬師堂と言えば…
ちなみに、道中ずっとかつてどこかで「東光庵薬師堂」について見聞きした覚えがあり、ずっと思い出そうと頑張っていたのですが、それをついに先日思い出しました。
これだ。
私が好きな畠中恵さん著の人気シリーズ「しゃばけ」の5作目。
いつもは江戸が舞台のシリーズですが、この「うそうそ」の巻では箱根で物語が進みます。
実家にある文庫本を見返した結果、やはり東光庵薬師堂が重要な場面の舞台になっていました。
これを呼んだのは私が高校生くらいの時のことです。
当時は箱根に何の縁も感じていませんでしたが、数年の時を経て若だんなと同じ地を踏むことになろうとは。
≪次の話≫
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