買い物しようと街まで~で~か~けた~ら~
強羅から宮城野方面へ下る。
強羅駅から、さらに下ると宮城野地区に出ます。
有名な大文字焼きが見られる「明星ヶ岳」への登山道もこちらから登れます。
コンクリートで舗装された急坂を下り…リズムを間違えれば転げ落ちそうな急階段を下り…。
宮城野あたりへ到着します。
この日は気になっていた喫茶店に行くつもりで歩いていたのですが、はい。
財布を忘れた愉快な私でした。
早川堤で黄昏る
銀行カードもクレジットも財布の中なので成す術なしでございますね。
長い坂を下ってきたので取りに帰る気力も沸きません。
幸いにも交通系ICのアプリがクレジットカードと連携していたので、近くのコンビニで買い物はできました。
サラダパスタと恵方巻を買いましてぷらぷらします。
少し歩いたところにある早川の河川敷でコンビニごはんにすることにしました。
冬だからこれといって見どころもないのですが、川は好きです。
以前北海道で、友人Jと川を眺めるなら上流派か下流派かという話をしたのを思い出しました。
私は変わらず下流派。
川と言えば、中学生のころ、やはり友人Jともう1人の友人Nとひたすら近所の川を下ってゆく遊びをしました。
学校指定のださいジャージを着て、ばしゃばしゃと浅い川の中を歩きました。
あれは暑い夏の日のことでした。
日差しは暑くても山から流れ出す川の水は冷たく、足先からキーンと冷やされる感覚を思い出します。
3人の中でも特に私は水の中を歩くのを好ましく思っていて、ごろごろと石が転がる川の中を歩いていました。
友人Nは私の歩く速度に合わせ、川岸をゆっくり歩いていました。
友人Jは気まぐれに水に入ったり出たりしながら下流を目指します。
学校近くから探索を始めた川は、やがて私の家の近くを通り、さらに駅の方向に流れているようでした。
近所の川とはいえ、実際に川に沿って歩くのは初めてのことでした。
そのため、知った川が別の知った川の流れにつながっていることに気付いた瞬間は少し驚きました。
ちょうど太陽が頭の上を通り過ぎ、1日の内で最も暑い時間になった頃、私たちは大きく曲がる川沿いを歩いていました。
友人Nが不意に「あ。」と声を上げて立ち止まります。
ばしゃばしゃと水を蹴りながら、曲がった先には大きな木が川に覆いかぶさるように立っていて、強い日差しを妨げていました。
木漏れ日がきらきらと水面を輝かせており、周囲はセミの声でいっぱいでした。
逆光の中、黒い大きなシルエットが私同様、水の中に立っています。
それは立派な角を持つ雄鹿でした。
私たちは間近での野生動物との遭遇に驚いて、静かに動きを止めました。
川の真ん中を歩いていた私はちょうど真正面に鹿と向き合っていました。
鹿は私たちを待っていたかのようにこちらをじっと見ていました。
体は横を向いていましたが、首だけこちらに向けていて絵に描かれたような立ち姿でした。
私の足の間を流れた水が鹿の足元まで到達したであろう頃、鹿は私たちから視線を逸らし対岸の茂みの中へ姿を消しました。
わずかな時間のできごとですが印象深い思い出です。
そんなことを考えながら早川河川敷で黄昏れていました。
寒くはありますが、日差しは温かいこの頃です。
恵方巻をかじり終えた後に、今年の恵方を向かずに食べたことに後悔しました。
過ぎ去りし青春時代の思い出を回顧し終えたところで、もう帰ることにします。
上手くいかないこともあるものです。
以前、春に来た際の早川堤の景色。
まだ満開とは言えませんが、中々にきれいでした。
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